○小説2



帰り道

※エンディング後の話です。ネタバレあり。
 CPは神薙×ハヤト

 

墓参りを終えた帰り道、ハヤトと神薙は鳴門市を一望できる坂道を歩いていた。

神薙はさっきから墓参りに同行できなかったことをぶつくさと愚痴っている。

「しつけーなぁ、キスしてやっただろ?」

「すっごい誤魔化された感じがするヤツだったけどな!」

 神薙は大仰にため息をついて、ちょっと笑う。

「ま、許してやるよ。んでさ、同棲のこと、考えてくれた?」

「別に同棲する必要ないだろ? 俺達、地元の大学に通うんだし」

「ま~、そうなんだけど、俺としては心配でさ」

「何が?」

 ハヤトが振り返って小首をかしげる。中性的な感じのする細い体に日の光が当たる。神薙は躊躇った後、おずおずと答えた。

「……浮気とか」

「ま~、大学にイイ女はたくさんいるだろうしね」

「否定しろって! はぁ…すっごい心配」

「少なくとも、男には目移りしないから、安心しとけ」

「安心できねぇっ!」

「言っとくけど、俺はわりと一途なほうだぞ」

 ハヤトが可笑しそうに笑って、神薙を見る。

「それは…まぁ、よく知ってる」

 未だに初恋の相手を忘れられないハヤトに対して、否定する言葉はでない。神薙は気持ちを抑えようと、視線を空に向けた。



「何、見てんの」

「空はでかくていいよなあ。でっかい男になりたいぜ」

「神薙はけっこうでかいヤツだと思うけど」

 ハヤトの言葉に神薙は驚いて視線を彼に戻した。ハヤトは目を細めて自分を見ている。

「いいよね、お前みたいなの。いい旦那になれるよ」

「なんだそりゃ……」

 照れくさくて、まっすぐに見れない。しかし、何となく他人事のようなセリフに思わず言ってしまう。

「嫁さんはもちろんお前だろ?」

「マジで言ってんの?」

「当たり前だろ」

「ま、考えとくよ」

 ハヤトは返事を保留するかのように言う。神薙は少し落ち込みつつも、その背に手を回す。

「それでさ、同棲の話だけど」

「だから、必要ないって」

「いや、絶対に必要があると俺は確信した!」

 神薙が頑として主張すると、ハヤトは呆れた顔で「考えとく…」とだけ、答える。

(何だかんだ言って、ハヤトは押しに弱いから、俺の努力次第だよなあ)

 神薙はちょっと照れているハヤトの横顔を見つめながら、ひそかに決心していた。

 

【作者コメント】

神薙とハヤトの友だちみたいな恋人会話がけっこう好きです。ハヤトは何気に押しに弱いので、神薙の頑張りにかかってます。同棲のお話は最初からしたいなあと思っていて、本当はEDに入れたかったんですが、EDが長くなりすぎだったのでやめました。神薙はじわじわカッコよく見えてくるキャラ。